11.24.01:08
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08.27.02:01
刻むのは…
赤い髪を下した姿で何気なく露店を歩いていると、ある腕輪が目に付いた。
それは何の鉱物でできているのかはわからないが、シルバーの中に、傾けると淡い緑の光が生まれるシンプルな腕輪だった。
店主の許可を得てそれを手に取り、いろんな角度からその光を眺めていると店主が、気に入ったかい? と声をかけてくる。
「えぇ、特にこの淡い緑が♪…、そうだいいこと思いついた♪ おじさま、これ頂きたいんだけど?」
店主に代金を支払い、その足でアクスヘイムのなじみの店へ。
「おじ様方~、お店が開いてるってことはどちらかいらっしゃる~?」
扉を開いて覗き込むのは武器屋。
今使っている爪を作ってくれたところだ。
赤髪の声を聞きつけ、ふくよかおじさんがいつもと変わらぬ笑顔で奥から出てきた。
「やあ、久しぶり。今日はどうしたんだい?」
「こんにちは、今日も素敵な笑顔をありがとう♪ あのね、これなんだけど…。」
いつものあいさつを交わすと、カウンターへと近づきさっきの腕輪を取り出す。
「この表面に」模様を彫ってもらいたいんだけど、できるかしら?」
「どれどれ、ちょっと借りてもいいかな?聞いてくるよ。」
腕輪を受け取ると、ふくよかおじさんは奥へと入っていった。
カウンターの椅子に座って待っていると、ふくよかおじさんと、もう一人、寡黙おじさんが顔を出す。
目が合って手を振る。
それを返すように軽く手があげられる。
いつもと変わらない言葉のないあいさつが交わされる。
「…どんな模様を彫るんだ?」
「植物なんだけど、アイビーってわかる?それを彫ってもらいたいの。」
「…何となくは解るが…、コレの幅が狭いぶん、凝ったものは彫れんぞ。」
「助かるわ♪男性に送る物だからシンプルなのがよかった「お前の男か?!」の♪ …え?」
普段の彼からは想像できないような勢いで言葉がかぶせられ、思わず聞き返してしまう。
ふくよかおじさんも驚いてたが、そこは長年一緒に店をやっているだけあってすぐ元に戻っている。
そして、笑いながら、まぁまぁと落ち着かせる。
赤髪も言葉を理解すると笑顔で答えた。
「おじ様?アイビーの花言葉って知ってる?」
可愛らしく微笑みながらカウンターへ身を乗り出し小声紡ぎだされた言葉は…。
「 友情 」
礼を言って店を出る赤髪の手には、模様が彫られた腕輪があった。
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